医師又は歯科医師個人が診療所を開設する場合、医療法第8条に基づき開設後10日以内に管轄の保健所に診療所開設届を提出します。
この条文だけ見ると、最初に保健所に行くのは診療所開設届を提出するタイミングと思われるかもしれませんが、実際は、診療所の物件が決まり、診療所の平面図案ができたら、保健所に図面の事前相談に行き、必要な構造設備が備わっているか等の確認を行います。
そのため、開設前から保健所とのやり取りは始まっています。
医療法第20条には、「病院、診療所又は助産所は、清潔を保持するものとし、その構造設備は、衛生上、防火上及び保安上安全と認められるようなものでなければならない。」としか書かれていません。
そのため、保健所により「清潔を保持するために必要な構造設備」にブレがあります。
A保健所では指摘がなかったことが、B保健所では構造の変更の指導があったというケースもありますのでご注意ください。
保険医療機関の指定申請
保険診療を行う場合、保健所に開設届を提出したら、次に管轄の厚生局に保険医療機関指定申請をしなければなりません。保険医療機関指定申請は、毎月指定申請締切日までに申請することで、翌月1日付で指定が受けられます。
そのため、締切日より1日でも申請が遅れてしまうと保険診療の開始が1か月遅れてしまいますので、ご注意ください。(保険指定申請の締切日は管轄ごとに異なります。)
変更事項の届出(保健所・厚生局)
診療所を開設後、開設届の記載事項等に変更が生じた場合は、届出が必要です。
保健所に届出が必要な事項
変更後10日以内に、管轄の保健所に「診療所開設許可(届出)事項中一部変更届」を提出します。
主な届出事項は、以下のとおりです。
- 開設者の住所及び氏名
- 診療所の名称
- 所在地の表示(診療所を移転する場合を除く)
- 診療科目
- 管理者の住所及び氏名
- 従業員の定員
- 建物の構造概要及び平面図
- 診療に従事する医師(歯科医師)の氏名、担当診療科名、診療日及び診療時間 など
診療所を移転する場合は、変更届ではく、現在の診療所を廃止し、新たに開設となりますので、ご留意ください。
厚生局に届出が必要な事項
変更後遅滞なく、管轄の厚生局に「保険医療機関届出事項変更(異動)届」を提出します。
主な届出事項は、以下のとおりです。
- 保険医療機関の名称
- 開設者名の変更
- 保険医の変更(退職・入職等)
- 診療科目
- 診療時間
- 建物の構造概要(区画変更) など
医療法人化を視野に入れた準備
個人開設した診療所の医療法人化を目指す場合、診療所の個人開設時より準備しておくことで、医療法人設立認可申請時の準備が非常にスムーズになります。
例えば、医療法人設立認可申請をご依頼いただい際、保健所に提出した開設届一式(添付書類を含む)のご提出をお願いしております。添付書類の中には、院長先生の履歴書や診療所の平面図等も入っておりますので、添付書類を含め2部作成し、1部をお手元に保管いただくことをおすすめいたします。
また、医療法人に負債を引き継ぐ場合は、「金銭消費貸借契約書」、「返済予定表」、「診療所の内装工事の請求書・領収書」、「医療機器購入の請求書・領収書」等も必要となりますので、契約ごとにまとめて保管しておくと有用です。